働き方の壁を味方にする 第6回〜変化をFIRE戦略にどう活かすのか(1)ファットFIRE〜

FIRE

こんにちは、FP-kawaです。このブログでは、経済的自立と早期リタイア、いわゆる「FIRE」を目指すサラリーマンの皆さまに向けて、お金に関する様々な情報をお届けしています。

連載の第6回からは、いよいよ実践編に入ります。これまで解説してきた税制や社会保険の歴史的な制度変化を、FIRE戦略にどう活かしていくのかを具体的に考えていきましょう。

今回は、十分な資産を築いて労働から完全にリタイアする「ファットFIRE(Fat FIRE)」を目指す際の戦略と、制度変化の影響について解説します。

ファットFIREにおける社会保険の現実

会社員として働いている間は、厚生年金や健康保険の保険料を勤務先と半分ずつ負担(労使折半)しています。しかし、十分な資産を築いて会社を辞め、完全に労働から離れるファットFIREを達成した場合、日本の社会保険制度においてご自身は「第1号被保険者」となります。

つまり、お住まいの市区町村が運営する国民健康保険と国民年金に加入することになり、保険料は全額ご自身の自己負担となります。

国民年金保険料は定額ですが、国民健康保険料は前年の「総所得金額」等に比例して計算される仕組みです。ファットFIREの資金計画を立てる際には、この全額自己負担となる社会保険料を、リタイア後の毎月の固定費としてしっかりと見積もっておく必要があります。

税制の変化とリタイア後の「無税枠」

2026年の税制改正により、所得税が非課税となる給与収入のラインは178万円に引き上げられました。しかし、労働をしないファットFIREの場合、給与所得控除(74万円)は適用されません

ファットFIRE達成者が所得税の計算においてベースとして活用できるのは、全納税者に一律で適用される「基礎控除」です。この基礎控除額は、2026年現在で104万円となっています。

もし、リタイア後に趣味の延長で少額の事業収入(雑所得や事業所得)を得るような場合、経費を差し引いた後の所得がこの基礎控除の範囲内(104万円以下)に収まれば、所得税はかかりません。

税制改正によって基礎控除が引き上げられたことは、リタイア後のささやかな収入に対する「無税枠」が拡大したことを意味し、ファットFIREにとっても地味ながら嬉しい恩恵と言えます。

投資収益の取り崩しと社会保険料のコントロール

ファットFIREの生活費は、主にこれまで築き上げた資産の運用益や取り崩しによって賄うことになります。ここで重要になるのが、運用益に対する税金と社会保険料の関係です。

NISA口座内で得た運用益(配当金、分配金、売却益)や、特定口座(源泉徴収あり)で確定申告不要を選択した利益は、税制上の「課税所得」には算入されません。これはファットFIREにとって極めて有利な仕組みです。

なぜなら、国民健康保険料は前年の総所得金額に基づいて計算されるため、課税所得に算入されないNISAや特定口座での運用益をいくら引き出しても、翌年の国民健康保険料が跳ね上がることはないからです。

ただし、ご自身が完全にリタイアして、会社員として働き続ける配偶者の「社会保険の扶養」に入ろうとする場合は、厄介な問題が生じます。

社会保険の被扶養者認定における「収入」の概念は、税制上の「所得」とは全く異なり、NISA口座内の非課税利益であっても、継続的な収入と見なされると130万円の判定基準に合算される可能性があるのです。

そのため、配偶者の扶養に入る形態でのリタイアを想定する場合は、定期的な配当金を受け取るよりも、分配金をファンド内で再投資し、必要なときに年1回程度スポット的に売却するといった、健康保険組合から「反復継続した収入」とみなされないためのポートフォリオ管理が求められます。

今回は、完全リタイアを目指すファットFIREにおける制度の活用法と注意点について解説しました。

次回、第7回では、資産運用と個人の事業収入(副業やフリーランス)を組み合わせる「サイドFIRE」の戦略についてお伝えします。

本ブログでは、皆さんからのコメントをお待ちしています。どうぞよろしくお願いします。

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