退職金だけが持つ圧倒的な税制優遇「退職所得控除」
シニア・ペナルティを受け入れて働き続けるか、それとも早期退職に応じるか。この決断を左右する最大の要因が、税引き後の「手取り額」の違いです。
私たちが毎月受け取るお給料には累進課税が適用され、さらに重い社会保険料(健康保険や厚生年金など)が控除されます。
しかし、退職金には「退職所得控除」という、日本の税制において最も優遇された仕組みが用意されています。早期退職による割増退職金であっても通常の退職金と課税上の違いはなく、全てがこの優遇の対象となります。
退職所得控除の計算は、勤続年数が長いほど労働者に有利になるよう設計されています。勤続20年までは「40万円 × 勤続年数」、20年を超える部分については「70万円 ×(勤続年数-20年)」が非課税枠として差し引かれます。
さらに、この控除額を引いたあとの残りの金額の「半分(2分の1)」に対してのみ課税されるという二重の保護が存在します。
具体的に、50歳で勤続25年の方が、合計2300万円の退職金を受け取るケースを計算してみましょう。
この2300万円は、会社規定の「基本退職金1500万円」と、早期退職に応じたことによる「上乗せ割増分800万円」の合計額という想定です。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 基本退職金 | 1,500万円 |
| 上乗せ割増分 | 800万円 |
| 合計退職金 | 2,300万円 |
| 退職所得控除額(40万円×20年+70万円×5年) | 1,150万円 |
| 課税対象額(2300万円−1150万円)× 1/2 | 575万円 |
もし2300万円を通常の給与所得として数年間にわたり受け取れば多額の所得税・住民税・社会保険料が徴収されますが、退職金として一括で受け取れば、税金や社会保険料の控除後の手取り額は圧倒的に多くなります。
冷静な比較がFIREへの第一歩
「60歳から65歳までの5年間、不満を抱えながら再雇用で働き続けて得る額面の給与」と、「50歳で割増退職金として一括で受け取る現金」。この両者の手取り額を冷静に比較し、税制の仕組みを活用して手元に残るお金を最大化することが、50代からのFIRE戦略を考える上での重要な判断基準となります。
次回は、こうして手にした退職金をように運用し、65歳の年金受給開始までの生活費を作っていくのか、「ペーパーアセットを活用したブリッジ戦略」について具体的に解説していきます。
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