50代からの戦略的FIRE〜第4回:「退職金での起業は危険」の嘘と現実〜

FIRE

収入分布にみる「激しい二極化」の傾向

さらに個人事業主の収入分布を深く掘り下げると、そこには激しい二極化の傾向が明白に現れています。

一方は、現役時代に培った高度な専門性や業界のネットワークをフルに活用し、年収500万円から1,000万円以上を能動的に稼ぎ出す高所得層です。

大企業向けのコンサルティングや専門性の高い技術提供など、高単価な案件を受託できる仕組みを持っている人々がここに該当します。

もう一方は、年間所得が200万円から400万円未満、あるいはそれ以下にとどまる低・中所得層です。

この層は全体の半数近くを占めており、競合が多い領域でのビジネスや、単価の低い仕事に追われているケースが少なくありません。

このように、スモールビジネスの世界は「生存しているからといって安泰ではない」という二極化の構造を持っています。

貯蓄ゼロの状態で起業し、もし中央値である年間261万円(月額約21万円)の所得しか得られなければ、日々の生活費を賄うだけで手一杯になってしまうでしょう。

退職金を守りながら事業を継続する鉄則と「収入のハードル」

退職金を全額事業に投じてしまい、もし採算が取れなければ、生活が行き詰まるだけでなく大切な老後資金まで失ってしまいます。このリスクを回避するためには、以下の鉄則を守る必要があります。

第一の鉄則は、廃業率の高い業界や未経験の分野を徹底的に避けることです。

参入障壁が低く素人が手を出しやすい飲食店などは、全産業平均を大きく上回る廃業率となっています。

未経験からの飲食業やリスクの高いフランチャイズ契約などの「レッドオーシャン」を避け、大企業で培った自身の専門性が直接活かせるBtoBのコンサルティング業や、固定費・在庫リスクの極めて少ない知識集約型ビジネスを選択することが、統計的優位性を確保する前提となります。

第二の鉄則は、十分な運転資金(ランウェイ)を確保することです。

退職金を一度にすべて投入するのではなく、一部の自己資金に加えて日本政策金融公庫などの創業融資を組み合わせることで、事業が軌道に乗るまでの期間に十分なゆとりが生まれます。

そして、50代からのFIREにおいて最も重要となるのが、事業単体で生活費のすべてを稼ぎ出そうとしないことです。

ペーパーアセットの運用益と組み合わせることで、事業で稼ぐべき目標額のハードルを大きく下げることができます。

例えば、仮にリタイア後の年間生活費が400万円(月額約33万円)だとして、退職金の一部をインデックスファンドなどで手堅く運用し、年間約150万円(月額約12万円)の運用益を安定して得られる体制を構築していたらどうでしょうか。

生活費の不足分は年間250万円(月額約21万円)となります。この金額であれば、まさに個人事業主の所得の「中央値」と同等であり、無理な拡大や過度なリスクを冒さずとも、自身のペースで十分に達成可能な数字となります。

次回は、起業よりもさらに心理的ハードルが低く、社会保険の恩恵も受けられる「適度な労働(パートタイム勤務)」を取り入れたバリスタFIREの具体的な戦略について解説します。

本ブログでは、皆さんからのコメントをお待ちしています。どうぞよろしくお願いします。

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